嗅覚のメカニズム

五感と呼ばれる感覚機能の一つで、匂いを感じ取る感覚です。

他に視覚、聴覚、触覚、味覚とありますが、嗅覚だけは脳に伝わる経路が別で、

匂い刺激をキャッチすると、感情や本能を司る大脳辺縁系にダイレクトに届きます。

大脳辺縁系とは、脳の中でも情動や意欲、記憶、自律神経系にも関与している部位になります。

 

記憶に関与している点について、わかりやすく例を挙げます。

 

8月の暑い日、田んぼに育つ青々とした稲の匂い。。。

その匂いが、何十年前に訪れたきりの田舎を思い出させたり、

 

街中を歩いていて、若者とすれ違った瞬間に香った、化粧品の匂い。。。

その匂いが、自分の若い頃の思い出を呼び起こしたり、

 

このように、匂いと記憶の関係性は強く、つまり嗅覚と脳の深い関わりを感じさせられます。

 

高齢者の嗅覚

高齢者は加齢により匂いを感じる力が衰えてくる傾向があります。

認知症がかなり進行している方では、良い香りが楽しめなくなってしまう方もいます。

 

嗅覚が衰えると何が問題になるのでしょうか。

匂いが分からなくなるだけのこと、ではありません。

 

嗅覚と味覚は密接に繋がっています。匂いを感じなくなると、食べ物の味が分かりづらくなります。

風邪をひいて鼻づまりが起きている時を想像してください。

何を食べても味気ない、味がしないでは、食欲も衰えてくるでしょう。

私の考えですが、糖尿病など特別に栄養制限が必要な方以外の高齢者は、食べることが運動をすること以上に大事だと考えます。

栄養がしっかり取れないと、体調の回復や身体を維持することがしんどくなります。

 

 

また、匂いを感じづらくなることで、危険が及ぶこともあります。

 

何か焦げ臭いなと感じ、義母が住む1階のキッチンを覗くと、コンロにかかった鍋から薄煙が上がっていて危険な状態だった!

当の本人は匂いに全く気付かずに、黙々と洗濯物を畳んでいた。。。

 

何日も冷蔵庫にしまっておいたおかずが痛んでいることに気付かずに食べてしまい、食中毒になってしまった。。。

 

嗅覚には危険を察知する役割もあります。

犬や猫など多くの動物は餌の判別や危険回避のため、嗅覚が発達していますが、人間も動物ですので同じです。匂いを感じる力が衰えてくれば、上記のような危険な場面も他人事ではありません。

 

嗅覚のトレーニング

高齢者と嗅覚

 

嗅覚機能を維持していくためにはどうしたらいいのでしょう。

 

日常的にできることがあります。それは、匂いをたくさん嗅ぐことです。

 

匂いを嗅ぐこと自体が、嗅覚に刺激を与えるトレーニングとなります。

 

例えばレモンを切った切り口の匂いを嗅いでみる、お味噌汁の湯気を味わってみる、

香りのよい花を飾る、お部屋でアロマ(精油)を炊いてみる等々。

 

日々の生活の中で折に触れて香りを嗅いでみる。

 

場所によってはお行儀が悪く見えるかもしれませんが、よい香りに触れることは、嗅覚の維持・改善に役立ちます。

 

アロマテラピーを日常に取り入れる

何より単純に考えて、良い香りを楽しめることは素敵なことだと思いませんか。

 

日常の生活に、良い香りをプラスすることで、気持ちが穏やかになります。

前向きになったり、表情が明るくなったり、心身に良い影響を与えられます。

 

そのような充実した日々を送る手助けにもなるアロマテラピーは色々な可能性を秘めていると思います。

 

そういった意味も含めて、嗅覚は生きていくために大切な感覚だと思います。