Sさんは4年前に大腿骨頸部骨折の手術を受けられ、娘様より術後の臀部(お尻)の痛み、立位時の痛みのケア等ご依頼がありました。
受傷前は杖歩行で移動出来ていた方です。
退院し、ご入居されている施設に戻られましたが、手術後のリハビリに際し『立ったり足を動かしたりすると痛みが出てしまうのではないか、また転んでしまうのではないか』といった、歩くことに対する恐怖心が強く、リハビリを進めていく中で大きな障壁になっていたそうです。
訪問当初はベッドから車椅子に移乗する際も、痛みへの不安から体に力が入ってしまう状態でした。
リハビリの最終目標としては、『骨折前のように杖を使って歩けるようになること』ですが、
まずは『臀部の痛みを緩和すること』そして『リハビリに対する恐怖心を払拭すること』を目標に、週2回の訪問施術をスタートしました。
Sさんは鍼灸施術を受けた経験が無く、ハリは痛い、お灸は熱いといったイメージが強いとの事でした。そのため刺す鍼は使用せず、てい鍼という刺さない鍼と、バンシンという火を使わないお灸を使用し、恐怖心により必要以上に緊張してしまわないように配慮しました。
また、居室内にラベンダーやベルガモット等のアロマを拡散し、リラックスして施術を受けていただけるような環境作りをしました。
同時に、Sさんの感じる痛みはピリッとくるものか、ズキッとするものか、どんな時には楽なのかといった症状に関しての問診から、
今の心配事や不安な気持ち、趣味活動など骨折前の生活の事といった治療とは直接関係のない様な事まで幅広く、自然とご本人の口から語っていただける様に、共感的な姿勢で傾聴に努めました。
この様な対応で施術を続け、臀部の『痛み』は1年後には『違和感程度』に、
施術内容は鍼灸施術から運動療法、歩行練習のリハビリ中心へと変わりました。
現在は臀部の痛みはすっかり消え、シルバーカーで施設内を歩けるようになりました。
現在は写真のように下肢筋力の強化を狙ったリハビリ運動を中心に行い、歩行の更なる安定化を目指しています。
歩行能力の改善は全身の健康状態の改善につながっています。
以前は毎回残していた食事を完食できるようになり、栄養状態が改善すると効率的に筋力向上が図れます。
また、認知機能の改善で自発的な会話が増えました。とても良い循環サイクルに入っています。
( 施術による効果には個人差があります) (Sさんは自費サービス30分での訪問です)
Aさんは4年前の脳内出血により左半身に麻痺があり、現在は車椅子で生活されています。
脳血管疾患の後遺症では、麻痺側が冷えているケースが多く、Aさんの麻痺側上下肢もとても冷たい状態です。
特に冬場は痙縮が強まり麻痺側の痛みが増すため、ご自身でも室温に気を配ったりカイロを使ったりして保温に努めているそうですが、下肢の痛みがきつくて辛い、左腕を少しでも動かせるようになりたい等のご要望があり、当院へ訪問施術のご依頼がありました。
片麻痺に対する施術のポイントは2つあります。
麻痺側を中心とした疼痛緩和と、麻痺肢関節の拘縮の予防・改善です。
そしていずれのポイントにも共通する項目は、冷えている麻痺側を温めて、血液循環を改善させることです。温めることで周囲の血液循環を改善させ、筋肉の緊張を和らげ、関節を少しでも動かしやすい状態にしてから、関節可動域訓練を行います。
冷えたまま硬さが取れていない状態で、半ば無理に関節運動を行うと、筋肉や関節を痛めるリスクが高まります。当院では写真のようにホットパックを複数使って冷えた患部に温熱を加え、筋肉の緊張を緩和した後に関節運動を行います。
(なおホットパックは温度にもよりますが、長時間同じ場所に当てていると低温やけどになる可能性がありますので注意が必要です)
また、痙縮を一時的に和らげる振動刺激を麻痺肢の足底や手掌に加えることで、
より効果的かつ効率的に筋緊張を緩和していきます。
温める事と同時に、低周波治療器による鍼通電(パルス鍼)を行い、筋肉の収縮を促し麻痺側の血流改善を図ります。肩部や上腕など、衣服を脱がなければ皮膚が露出できない部位は、粘着パッドでの通電としています。
このように、片麻痺患者さんへの施術は鍼灸施術にプラスして温熱、低周波、振動刺激、関節運動等を適宜組み合わせて対応しています。そのため、準備なども含め施術時間は40分前後取らせていただく場合があります。
( 施術による効果には個人差があります) (Aさんは健康保険による治療です)